モノづくりと人材・技術経営

世界標準規格を生むエンジニア

[2007年07月号]

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IDEC
藤田俊弘常務執行役員

 大阪大学の応用物理学科を出て、松下電器産業に入り米国勤務を含め13年間ほど開発畑を中心に歩いた後、92年に和泉電気(現IDEC)に移った。IDEC現社長の舩木俊之はいとこに当たり、舩木、藤田両家が和泉電気の創業家という背景があった。子供の頃から制御機器をおもちゃ代りに遊んでいた記憶があり、技術者だった父親が画いた図面が家にあるような環境で育ったから、私自身、技術開発のDNAを引き継いでいるという思いがある。


オートメーションの先へ
 和泉電気は60周年を機に2005年11月に社名をIDECに変更し、「Think Automation and beyond...」を目指す企業方針を明確にした。すでに十数年来、研究開発事業の方針として人と機械の共存する最適環境HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の創造を進めてきている。自動化に関する製品では市場シェアが高い操作スイッチ類やLED集合表示灯などオペレータインターフェースをはじめ、PLCなどコントローラ、各種センサによる計測・認識、また防爆機器など多品種にわたる。IDECの売上げの56%は市場シェアトップ商品で占める。この結果、昨年度の営業利益率は13%台に達している。

  主として自動化用途のコンポーネントを基盤に、現在では「オートメーションの先」を志向して、IDECデータロジック、IDECオプトデバイスなどグループ子会社の全体最適化を図り開発の統合化を進めている。開発面で重点強化しているテーマは、ものづくり次世代生産技術、安全・防爆・規格インテリジェンス、テクノロジー・イノベーション(制御技術の進化)、トレーサビリティ(新事業・制御との融合)の4領域だ。

ロボット制御セル生産システム
 モノづくりへのこだわりが強いIDECには、何から何まで自前で作ろうという風土がある。労働集約型で少品種大量生産に向いた人ライン方式、労働集約型で多品種変量生産に向いた一人セル方式、生産自動化型で少品種大量生産向きの専用自動化設備、さらに生産自動化型で多品種変量生産向きのロボット制御セル生産方式の全てが自社工場内で稼働している。

  ロボットは最も開発に注力する分野だ。特に2005年に内閣総理大臣表彰第一回『ものづくり日本大賞・優秀賞』を受賞したロボット制御セル生産システムは95年から5年間をかけて開発。2000年に導入を開始し、すでに同システムによる制御製品の生産は2700万台に達している。このシステムのセンサ、PLC、ロボットモジュール、部品供給トレイ、治具など、メカ系、電機制御系のキーコンポーネンツを自前で生産し全ての要素技術を供給できる。と同時にこのセル制御には世界最先端の安全技術を織り込んでいる。

システム統合力と世界規格の提案

  同システム開発に見られるように、IDECのエンジニアには個々の専門分野での開発力に加えて、自前の要素技術をシステム統合させる技術力が要求される。ひとつのシステムで生産効率を犠牲にすることなく安全性と生産性を両立させるための条件は、システム構成時に精度の追い込みができることだ。

  安全システム開発の一例にSafe Break Action機構の開発がある。これは万一過度な衝撃により構成部品に破損が生じた場合でも、安全側、すなわち機械を停止させる側に故障するような機構で、自動車、ロボットメーカーの採用が相次いでいる。

  またペンダントやクリップスイッチに組み込まれる3ポジションイネーブルスイッチもコアテクノロジーのひとつ。これは常態でOFF状態のスイッチを軽く押すとON、さらに押し込むとOFF、離すとOFFというスイッチングを可能にした機構で、危険状態でびっくりして指を離しても、逆に指を握りこんでも機械を非常停止させることが可能だ。このようにスイッチひとつとっても新たな開発の芽はいくらでも見出せる。

  モノづくりの品質や安全に関わるISO、IECなど国際規格の影響は益々増大する傾向にあり、各国による規格の提案競争の様相を呈している。欧州、米国に加え最近は中国が規格提案に積極的だ。そのなかで勝ち抜くためには開発技術や製品仕様を国際標準規格として提案できるエンジニアが求められる。

  3ポジションイネーブルスイッチでは、IECでの規格化を実現した。IDECのエンジニアには製品開発でも、規格化でも、学会発表でも世界を舞台に戦わせたい。



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